SNSやヴィンテージショップで見かけて、「素敵だな」と思ったことがある方も多いのではないでしょうか?
ミリアム・ハスケルは、コスチュームジュエリーの中でも特別な存在として、多くのコレクターやファッション愛好家を魅了し続けています。
でも、「ミリアム・ハスケルって、具体的にどんなブランドなの?」「どうしてそんなに人気があるの?」「他のコスチュームジュエリーと何が違うの?」と疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれません。目次[非表示]
夢のはじまり:ミリアム・ハスケル誕生物語
ブランドの創業者ミリアム・ハスケルは、1899年に米インディアナ州で生まれました。
シカゴ大学で3年間学んだ後、1924年には単身でニューヨークへ移ると、帽子職人としてキャリアをスタートします。
1926年には、マンハッタンにあるマカルピンホテルに最初のブティック「Le Bijou de L'Heure」をオープンし、ジュエリービジネスに転向します。
ミリアムはまさに、自身の情熱と才能で道を切り開いた女性だったのです。
キーポイント: ニューヨークでジュエリービジネスの世界へ飛び込み、自身のブランドを立ち上げた情熱的な創業者。
具体例: ブティック名「Le Bijou de L'Heure」はフランス語で「その時の宝石」という意味で、「女性はあらゆる機会に応じたジュエリーを身に着けるべき」というミリアムの信念を反映したものでした。
🔶なぜコスチュームジュエリーだったの?
ミリアム・ハスケルの作品は、主にガラスビーズやイミテーション(模造)パールを使った「コスチューム・ジュエリー」でした。
なぜ彼女は本物の宝石ではなく、コスチュームジュエリーを選んだのか、気になりますよね。
それは、当時の時代背景が大きく関係しています。
1920年代後半から世界は大恐慌に見舞われ、高価なジュエリーは一部の富裕層しか手に入れられない時代でした。
とはいえ、女性たちのおしゃれ心は変わりません。
ミリアムは、高価な素材を使わなくても、優れたデザインと丁寧な手仕事によって、本物の宝石に負けない美しさと価値を持つジュエリーを生み出せる、と考えたのです。
これは、ファッション界の革命児、ココ・シャネルがコスチュームジュエリーを流行させた流れとも重なります。
キーポイント:
高価な素材に頼らず、デザインと技巧で美を追求するコスチュームジュエリーの可能性に着目。
具体例:
ガラスパール、シードビーズ、金属パーツなどを巧みに組み合わせ、独創的で豪華なデザインを生み出しました。当時のファッションリーダーたちも、ハスケルのジュエリーを愛用したと言われています。
輝きの頂点へ:フランク・ヘスとの出会いと黄金時代
🔶天才デザイナー、フランク・ヘスの功績
ミリアム・ハスケルがブランドの顔なら、そのデザインの多くを手がけ、ブランドを成功に導いたのが、デザイナーのフランク・ヘス(Frank Hess)です。
彼はブティックが開店した1926年から1960年頃まで、ハスケルのチーフデザイナーとして活躍しました。
彼のデザインは、とにかく独創的で複雑、そして息をのむほど美しいのです。
特に、自然からインスピレーションを得たモチーフ、例えば花や葉、昆虫などを、ガラスビーズやバロックパール(模造)を使って立体的に表現する技術は、まさに芸術の域でした。
ミリアム・ハスケルのビジョンと、フランク・ヘスのデザイン力が融合したことで、ブランドは黄金時代を迎えることになります。
キーポイント:
フランク・ヘスの独創的で複雑なデザインが、ミリアム・ハスケルをコスチュームジュエリーのトップブランドへと押し上げた。
具体例:
バロックパールをふんだんに使った豪華なネックレスや、色とりどりのガラスビーズで花を表現したブローチなど、彼の代表作は今もなお高い人気を誇ります。彼のデザインは、しばしばアールヌーヴォーやアールデコの影響も感じさせます。
ハスケルジュエリーの揺るぎない特徴
ハスケルのジュエリーが特別なのは、デザインだけではありません。その「作り」へのこだわりが、他のコスチュームジュエリーと一線を画す理由なのです。
まず、ジュエリー制作のほとんどの工程が手作業で行われていました。
特に有名なのが、金属の土台にパーツをワイヤーで一つ一つ丁寧に取り付けていく技法。これにより、複雑で立体的なデザインが可能になり、強度も増します。
そして、驚くべきはジュエリーの「裏側」へのこだわり。通常は見えない部分まで、金属パーツで美しく処理されているのです。
これらは、身につけた時の肌触りや、服への引っかかりを防ぐためのもの。さらに素材選びにも妥協がなく、質の高いガラスビーズや模造パールが使われています。
キーポイント:
丁寧な手仕事、複雑なワイヤーワーク、美しい裏側の処理、高品質な素材。これらがハスケルジュエリーの品質を保証する特徴です。
具体例:
初期の作品(おおよそ1940年代後半まで)には、ブランドサイン(刻印)が入っていないことが多いのですが、その精巧な作り、特に裏側の処理を見れば、ハスケルのものだと見分けがつくと言われています。ルーペで細部を見てみると、その職人技に感動します。
受け継がれる伝説:時代を超えて愛される理由
🔶 デザイナーの変遷とスタイルの進化
1960年にヘスが退いた後も、ミリアム・ハスケル社はその輝きを失いませんでした。
ロバート・F・クラーク(Robert F. Clark)、ラリー・ヴルバ(Larry Vrba)といった才能あるデザイナーたちが、それぞれの個性と時代の空気を取り入れながら、ハスケルらしいスタイルを守り、発展させていきました。
例えば、60年代にはより大胆でカラフルなデザイン、70年代には民族調の要素を取り入れたデザインなどが登場します。
時代と共にスタイルは変化しても、品質へのこだわりと、女性を美しく見せるというハスケルの精神は、脈々と受け継がれていったのです。
キーポイント:
歴代のデザイナーたちが、ハスケルの伝統を守りつつ、時代のトレンドを取り入れてスタイルを進化させてきた。
具体例:
ラリー・ ヴルバがデザインした、大ぶりで存在感のあるネックレスやブローチは、現代のファッションにも通じる大胆さがあり、エジプトから着想を得たコレクションはコレクターズアイテムとしても人気です。
ヴィンテージハスケルの魅力と探し方
なぜ、作られてから何十年も経ったハスケルのジュエリーが、今もこれほどまでに人々を魅了するのでしょうか?
それは、やはり他に類を見ないデザインの美しさ、手仕事による品質の高さ、そして希少性にあります。
一つ一つが芸術作品のような存在感を放ち、身につける人の個性を引き立ててくれます。
ヴィンテージのハスケルを探す際は、まず「サイン(刻印)」を確認するのが基本です。年代によってサインの形式が異なりますが、「MIRIAM HASKELL」の刻印が入っていることが多いです。
ハスケル社がジュエリーにサインを刻印し始めたのは、1940年代でした。それ以前となる初期のジュエリーにはサインがないため、前述した作りの特徴(ワイヤーワークや裏側の処理)を確認するなど、デザインの特徴を識別することが重要となります。
ミリアム・ハスケルのジュエリーを購入する場合は、信頼できるヴィンテージショップや、専門のオンラインストアで探すのがおすすめです。
状態の良いものを見つけるには根気も必要ですが、出会えた時の喜びは格別です。
キーポイント:
時代を超越したデザイン、卓越した職人技、希少性がヴィンテージハスケルの魅力。サインや作りの特徴で見分けることができる。
具体例: 楕円形(オーバル)のプレートに「MIRIAM HASKELL」と刻印されたサインは、比較的よく見られるタイプです。一方で、馬蹄形(ホースシュー)のプレートにサインを刻んだものは、初期のものと言われています。購入する際は、パーツの欠損や金属の変色などもチェックしましょう。
まとめ
今回は、ヴィンテージジュエリーの中でも特別な輝きを放つ「ミリアム・ハスケル」の歴史を紐解いてきました。
創業者ミリアム・ハスケルの情熱と才能、天才デザイナー フランク・ヘスとの出会いが生み出した独創的なデザイン、そして何よりも、一つ一つ丁寧に作られた手仕事の温もりと品質へのこだわり。
これら全てが融合して、ミリアム・ハスケルは単なるコスチュームジュエリーを超えた、芸術品としての価値を持つに至ったのですね。
時代を経ても色褪せないその美しさと物語が、今も多くの女性を魅了し続けている理由がお分かりいただけたのではないでしょうか。
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