世界最大のカット・ダイヤモンドとしてギネス認定された「エニグマ」の秘密や魅力についてを、こちらでご紹介していきます。
ロンドンのサザビーズで現地時間2月9日、オークション「ラグジュアリー・セールス・シリーズ/RE(LUX)」が開催されました。
この日大きな注目を浴びたのが、555.55カラットのブラックダイヤモンド「エニグマ(The Enigma)」です。
「エニグマ」は、20年以上前に原石を購入した個人コレクターにより、出品されました。
競売の結果、ダイヤモンドは316万1千ポンド(約4億8300万円)で落札されました。落札者は、暗号通貨による支払いを選択しています。
ブラックダイヤモンド「エニグマ」とは?
「エニグマ」にこのような価値がつけられたのには、理由があります。
サザビーズによると、「エニグマ」は2006年版ギネスブックで、世界最大のカット・ダイヤモンドとして掲載され、オークションに出品された中でも最大のカット・ダイヤモンドなのだそうです。
しかも、これほどの大きさと美しさをした天然のブラックダイヤモンドは、非常に稀な存在とのこと。
サザビーズ・ロンドンのニキータ・ビナーニ氏は、「宝石というよりも、個性的で貴重な好奇心の対象。人類が知る限り最も希少な、10億年前の宇宙の驚異である」と説明しています。
個性的なカットの秘密
「エニグマ」のカットは個性的なフォルムが印象的です。
最初の所有者が1990年代後半に入手した際、原石は800カラット以上と推測されており、カットには3年以上の歳月が費やされたと考えられています。
このカットは、保護とパワー、強さを象徴する中東の手の平のシンボル「ハムサ」からインスパイアされたもの。
ダイヤモンドは555.55カラットにカットされただけではなく、55面のファセットが施されています。
サザビーズはこのカットについて、「想像を絶するほどの完成度だ」と伝えています。
ブラックダイヤモンドは宇宙が起源?
通常ダイヤモンドは地球の奥深くで生成され、キンバ―ライトと呼ぶ火成岩の中から採掘されています。
しかしブラックダイヤモンドは地表近くにある沖積堆積物から発見され、「カーボナ―ド」と呼ばれています。
カーボナ―ドは26億年~36億年前に生成されたもので、星間空間に多く存在する窒素や水素、そして流星特有の鉱物オスボルナイト(Osbornite、窒化チタン)をわずかに含んでいます。
このことから、「エニグマ」のようなブラックダイヤモンドは、隕石衝突による自然化学蒸着か、ダイヤモンドを含む小惑星が地球に衝突したことで生成したのではと考えられています。
「エニグマ」はこれまでに公の場に姿を現せたことはなく、今回が初披露となりました。
ジュエリーとして注目のブラックダイヤモンド
ダイヤモンドといえば無色透明が一般的ですが、色がついたものは「ファンシーカラー」と呼ばれています。
色の種類や美しさによっては希少価値が高いものがあり、オークションなどでは高額で取引されています。
通常ブラックダイヤモンドは工業用に使用されることが多く、宝石品質のものはジュエリー用に使用されますが、「エニグマ」ほどのサイズが見つかることは非常に稀です。
これまでにも、「ブラック・オルロフ」「アムステルダム・ダイヤモンド」など、有名なブラックダイヤモンドが発見されてきました。
クールな印象のブラックダイヤモンドは、年齢やジェンダーを問わず楽しめるジュエリーとして、今後も人気が上昇しそうですね。
