映画『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ』を見ました。

ヘヴィメタルバンドのドラマーだった男性が、ある日突然聴覚を失うというストーリーを描く、アマゾンスタジオ制作の映画です。

本作が制作されることになったルーツや主演俳優のコメント、作品を見たあとの個人的な感想などをネタバレなしでお伝えしていきます。


映画にはこんなルーツが!


映画『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ(原題:Sound of Metal)』は、2021年に公開されました。

監督と共同脚本は、ダリウス・マーダーです。

今作のルーツとなったのが、マーダー監督が脚本を担当した映画『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命』(2013)で協力した、デレク・シアンフランス監督の未完成映画だったそうです。

その作品は『メタルヘッド』と題した映画で、トレーラーで暮らしながらライブ活動をする米スラッジメタルデュオ、「ジュシファ―(Jucifer)」を主演に起用する予定でした。

ジュシファ―は、ボーカル兼ギターのガゼール・アンバー・バレンタインと、彼女の夫でドラムスを担当するエドガー・リヴェングッドによる、2ピースバンドです。

この映画ではトレーラーでツアーを回るデュオの生活を描きながら、ドラマーの主人公が難聴になるという架空のストーリーを加えていたのですが、プロジェクトは破棄されてしまいました。

しかし、この作品を気に入ったマーダー監督が取り上げることになり、実の弟でミュージシャンのアブラハム・マーダーと共同脚本を執筆しました。

マーダー監督の祖母は、耳が不自由だったそうです。

主演俳優について


本作で主演を務めたのは英国人俳優のリズ・アーメッドです。

これまでに映画『ローグ・ワン スターウォーズ・ストーリー』(2016)『ヴェノム』(2018)、『ゴールデンリバー』(2019)など多数の作品に出演しています。

モーグル・モーグリ(MogulMowgli)』(2021)では、国際的に躍進する直前に病気を発症し、衰弱してしまうパキスタン系英国人ラッパー役を演じました。

『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ』でリズが演じたのは、ある日突然難聴に陥ってしまうメタルドラマー、“ルーベン”役です。

メタルバンドの激しいドラミングをプロの様にこなしており、この場面だけでも感動してしまいます。

かつて薬物中毒だったロッカー、耳が聞こえなくなる自分自身との葛藤、恋人を愛する1人の男性、普通の生活に戻るという希望を持つ人間・・・そんな人物像を、表情と体全体で、本当にうまく表現しています。

リズは昨年4月に英BBCニュースに出演した際、役作りのために居住地であるロンドンから米国へ渡り、耳の不自由な俳優達と共演するために、アメリカの手話を学んだと明かしました。

その時の経験について、このように語っていました。

「僕は『聞く』という言葉の本当の意味を学ぶことが出来た。それは、ただ単に耳で聞くことだけじゃない。『聞く』ということは、注意を払い、エネルギーを使いながら、体全体で聞くという意味であることを学んだ。」

コミュニケーションの本当の意味とは、耳で起こることだけじゃないんだ、と理解したそうです。

映画を見た感想


私は映画を見る前、基本的な情報を全く入手しないようにしています。

なので最初に映画のタイトルとトレーラー映像を目にした時、「ああ、メタルドラマーが難聴になって、頑張ってバンド活動をしていく物語なんだな~」と、勝手に思っていました。

しかし、見てみると全然違ってビックリ!!

突然難聴になった人の身になるような映像と音響で、ストーリーが進んでいきます。

私はラストに近づくにつれ、主人公と気持ちが寄り添ったような気がします。

最終的にラストシーンで彼がとった行動は、映画の途中から私が望み始めていた結果へとつながりました。

もしかしたら、ストーリーの展開上、強引にこんな気持ちにさせられたのかも知れません。

お互いを理解できる仲間の中で生きていれば、心地良いのは当たり前です。

でも、現代の世の中では、色んな人達が共有して生きていくことが大切だし、それが可能でもあるのです。

最初は辛いし、決して簡単ではないと思います。

こういった状況を人々や社会が理解して受け入れなければいけないし、なんといっても自分自身が自信を持って、自分を差別化しないで共存していかなくてはいけない。

このことは、私達が人生で局面する、さまざまな体験にも当てはまるのではないでしょうか。

映画を見ていくうちに、タイトル名はヘヴィメタルの音、という意味だけではなかったんだ、ということにも気付かされました。