英時間25日、エリザベス女王による毎年恒例のクリスマスメッセージがBBCなどで放送されました。女王は困難な年となったここ数か月の間、他人のために無私の努力を尽くした人々に感謝の気持ちと称賛を伝えました。パープルのアンサンブルを着用した女王がつけていたのは、シェル型のブローチです。このブローチは、どのような歴史があるのでしょうか。
写真:Duke and Duchess of Cambridge/Instagram
このブローチは「クイーンマザーのシェルブローチ(The Queen Mother's Shell Brooch)」として知られており、正式名を「The Courtauld Thompson Scallop-Shell Brooch」といいます。
正式名にあるように、ブローチはホタテ貝の貝殻(Scallop Shell)をモチーフにしたフォルムです。貝殻部分にはサイズの異なるラウンドブリリアントカットダイヤモンドがパヴェセッティングされています。センターには1粒パールを配し、まるで貝殻でパールが誕生したような印象です。
貝殻からはスクエアシェイプのダイヤモンドを敷き詰めた5本のラインが流れ、先端にはペアシェイプのダイヤモンドをドロップしています。
ブローチは1919年にロンドンの「ゴールドスミス&シルバースミス社」で製作されました。美しい貝殻のデザインは、スコットランドの有名な発明者の息子コート―ルド・トムソン卿によるものです。後にブローチはトムソン卿の妹で作家のウィニフレッド・ホープ・トムソンに引き継がれ、彼女が1944年にクイーンマザー(エリザベス女王の母)に贈呈しました。
ウィニフレッドは、「クイーンマザーへの尊敬と深い崇拝を意味するもの」として、ブローチを捧げたそうで、英国の女王から女王へと引き継がれることを望んだといいます。
クイーンマザーはこのブローチがお気に入りだったようで、公の場で何度も着用していたそうです。100歳を迎えた2000年8月の誕生日という記念的なイベントでも身に着けていたほどです。
クイーンマザーが2002年に崩御した後、娘であるエリザベス女王がブローチを受け継ぎました。
エリザベス女王は、これまでにこのブローチを何度も着用しています。2011年に執り行われた最初の孫であるザラ・フィリップスの結婚式や、女王の父親ジョージ6世の崩御60周年、2018年のリメンブランス・サンデーなど、重要なイベントで着用する姿が目撃されています。
クリスマスメッセージを伝えた女王は、パールのイヤリングとネックレスを着用していました。ネックレスは18世紀のアン女王のパールネックレスと、50個のパールを連ねたキャロライン女王のパールネックレスです。両者ともに、女王とフィリップ王配との結婚祝いとして、父ジョージ6世から贈られたものです。
パールは女王にとって大切な意味を持つ宝石です。女王の祖父ジョージ5世が即位25周年を祝った1935年、孫娘であるエリザベスと妹マーガレットに贈ったのが、パールのネックレスだったのです。
当時9歳だったエリザベスは3連パールのネックレスを、5歳のマーガレットは2連パールのネックレスを受け取りました。