ラッケンブースというモチーフをご存知でしょうか。
ハートの上に王冠が乗ったラッケンブースは愛情の証とされ、古くからスコットランドで婚約や結婚の記念として贈られてきました。メアリー女王の伝説のひとつとしても語られ、スコットランドを代表するモチーフとなりました。
長い時代を経て、スコットランドの伝統的デザインとして知られるようになった、ラッケンブースの歴史や意味を紐解いてみました。
ラッケンブースの歴史
15世紀…スコットランドのエジンバラにあるハイストリート(ザ・ロイヤル地区)に存在する聖ジャイルズ大聖堂の周囲には、多くのストールや金銀細工師の工房が軒を連ねていました。
この場所ではジュエリーや雑貨を扱うストールが多く、ここで売られるハート型のブローチが、ラッケンブースと呼ばれ始めたのです。
この場所ではジュエリーや雑貨を扱うストールが多く、ここで売られるハート型のブローチが、ラッケンブースと呼ばれ始めたのです。
16世紀…ハートに王冠が付いたラッケンブース・ブローチが、スコットランドで流行の兆しを見せます。スコットランド女王メアリー・ステュアート(クイーン・オブ・スコッツ)が夫に贈ったという話が伝わり、人気が一気に広まったとされます。
当時はハート型のブローチは愛情を表現するものとされ、ラッケンブースを婚約や結婚の儀式の際に贈る習慣が始まりました。
18世紀…小さなハート型のラッケンブース・ブローチは、邪気から身を守るお守りとして使用されるようになります。
18世紀中頃…アメリカに向けてシルバーの取引が盛んになり、シルバー製のラッケンブースも輸出されるようになります。やがてネイティブアメリカン達がこのデザインを気に入り、彼らの民族衣装の代表的モチーフにもなりました。
18~19世紀…ラッケンブースのサイズは大きくなり、裏側には結婚記念日やイニシャル、バイブルからの引用などが彫刻されるようになります。
19世紀中期以降…ふたつのハートが中央で重なり、アルファベットのMに似たデザインのラッケンブースが流行します。
19世紀以降…ラッケンブースはスコットランドを象徴するモチーフとして定着しました。
19世紀以降…ラッケンブースはスコットランドを象徴するモチーフとして定着しました。
ラッケンブースの名前の由来
15世紀初頭、エジンバラの聖ジャイルス大聖堂の周囲では、ジュエリーなどを売るストールが溢れていました。
16世紀までには、この辺りに商売をするためのストールが入った、新しい建物が建てられます。これらのストールはそれぞれの面積が非常に狭く、店を閉めた後はしっかりと鍵を閉める必要がありました。
ストールは英語で『ブース(booth)』とも言います。展示会で企業が出店する『ブース』を想像して頂けるでしょうか?各ブースが小さなスペースですよね。
そして、鍵を閉めることは『ロック(lock)』です。
このことから、ロックとブースのふたつの言葉から着想を得た『ラッケンブース(Luckenbooth)』という表現が生まれました。そして、このストールのある場所が『ラッケンブース』と名付けられたのです。さらに、この場所で売られていたハート型のブローチが、ラッケンブースと呼ばれるようになりました。
そして、鍵を閉めることは『ロック(lock)』です。
このことから、ロックとブースのふたつの言葉から着想を得た『ラッケンブース(Luckenbooth)』という表現が生まれました。そして、このストールのある場所が『ラッケンブース』と名付けられたのです。さらに、この場所で売られていたハート型のブローチが、ラッケンブースと呼ばれるようになりました。
メアリー女王が夫に贈ったことで有名になったことから、『メアリー女王のブローチ』『ホリルード・ブローチ』とも呼ばれました。ホリルードは、メアリー女王が居住した宮殿です。また、ラッケンブースのモチーフは、ふたつ重なるハートがメアリー女王(Mary,Queen of Scots)の頭文字であるアルファベットのⅯに見えます。このことも、メアリー女王のブローチと呼ばれた理由のひとつだといわれます。
このほか、『ウイッチ(魔女)のブローチ』、『ジョニー・ファーのブローチ』などとも呼ばれていたそうです。
ラッケンブースの意味
ラッケンブースは、スコットランドの伝統的な愛の証のモチーフです。ハート型は愛情を象徴し、王冠は忠誠を表すものとされています。
当時は愛情を誓う証として婚約した相手に贈られており、現代の婚約・結婚指輪のような役目を果たしていたのです。
スコットランドの家系では、母親から娘へと代々受け継ぐという伝統もあるそうです。友達や家族との深い友情や絆を表すものともされていました。
スコットランドの家系では、母親から娘へと代々受け継ぐという伝統もあるそうです。友達や家族との深い友情や絆を表すものともされていました。
ラッケンブース・ブローチは幸福のお守りとされ、着ける人を邪眼から守るともいわれます。
出産時の痛みを和らげたり、女性の左腿近くのペチコートに着けることで、母乳の出を良くするという効果があると信じられていたそうです。
赤ちゃんをくるむショールに着けることで、妖精にさらわれることを防ぐといわれていたことも。結婚後初めて生まれた子供には、毛布にブローチを付けて幸福のお守りとしていました。
ラッケンブースとメアリー女王の伝説
メアリー女王は二人目の夫であるダーンリー卿に、愛と献身の証としてラッケンブースのブローチを贈ったという伝説があります。
ハートと王冠のモチーフのラッケンブースと、悲劇の女王と呼ばれたメアリ女王。
ふたつのロマンティックなストーリーが結びつき、スコットランドを象徴するアイテムとして、さらに人気を呼ぶようになったといいます。
ふたつのロマンティックなストーリーが結びつき、スコットランドを象徴するアイテムとして、さらに人気を呼ぶようになったといいます。
ラッケンブースの素材とデザイン
ラッケンブース・ブローチは、シルバー製のものがほとんどですが、鉄や真鍮、ゴールド素材のものも作られています。
最初はシンプルなハート型をしていましたが、徐々にハートが大きくなり、ふたつのハートが重なるようになりました。王冠が乗るデザインが出来たのは、17世紀中ごろだそうです。
最初はシンプルなハート型をしていましたが、徐々にハートが大きくなり、ふたつのハートが重なるようになりました。王冠が乗るデザインが出来たのは、17世紀中ごろだそうです。
ラッケンブースの代表的なデザインは、ハート型の上に王冠が乗っているものです。ハートはシンプルなものから、ふたつのハートが連結したものなど、デザインもさまざまです。
王冠がないスタイルや、凝ったディテールや彫刻が施されたものも作られています。スコットランドの国花である『アザミ』のモチーフや、聖アンデレ十字などが付いたものも、多く見られます。
王冠がないスタイルや、凝ったディテールや彫刻が施されたものも作られています。スコットランドの国花である『アザミ』のモチーフや、聖アンデレ十字などが付いたものも、多く見られます。
ラッケンブースのブローチは、アンティークやヴィンテージなどが現在も流通しています。
スコットランドの伝統モチーフとして、新しい作品も作られているので、プレゼントやお土産としても人気があります。
スコットランドを象徴する可愛いラッケンブースは、現在も変わらず多くの人々を魅了し続けているようです。